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京都地方裁判所 昭和34年(む)8号 判決

被告人 千賀昭

昭三・一二・一五生 食料品商

決  定

(被告人氏名略)

右の者に対する脅迫被告事件について、昭和三四年四月一八日京都地方裁判所宮津支部裁判官篠田吉之助のした保釈却下決定に対し、被告人から刑事訴訟法第四二九条によりその取消の請求があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件請求を棄却する。

理由

本件請求の理由は別紙記載のとおりである。

よつて、一件記録を検討するに、被告人は、昭和三四年三月三一日、「昭和三三年五月五日夜八時頃京都府与謝郡岩滝町字岩滝料理業当里家こと間宇谷孝成方奥の間に土足のまま上りこみ、同人に対し同人が被告人方へ飲食代金の請求書を届けたことに立腹し、「請求書を家に持つてくるなといつたのに何故持つて来たのか。手も足もへし折つてやろうか。殺してやろうか。」等どなりつけ、手をふりあげ、同人の生命身体にいかなる危害を加えるかも知れない態度を示して脅迫したものである。」との公訴事実により起訴されたこと、右事実につき刑事訴訟法第六〇条第二号第三号に該当するものとして勾留されていること、昭和三四年四月一六日被告人から保釈の請求があり同年同月一八京都地方裁判所宮津支部裁判官篠田吉之助が刑事訴訟法第八九条第四号に該当するものとして右請求を却下したことが明らかである。

しかして、検察官提出の資料によれば、被告人は窃盗罪、逃走罪等のほか暴行罪により三回(そのうち一回は傷害罪を含む)計八回にわたつて処罰を受けたことがあること、また本件において司法警察員の取調に対し「前記間宇谷方に行つたことは事実であるがその余のことは記憶がない」旨供述していることが認められ、これと本件犯行の罪質態様および未だ第一回公判前であつて証拠調も終了していなことを考え合せると、現段階において被告人を釈放するときは罪証隠滅の行動に出る蓋然性が大であると認めざるをえないので、結局右は刑事訴訟法第八九条第四号に該当するものといわなければならない。

なお、本件記録にあらわれた全資料をもつてしても被告人に対し裁量保釈を許すのが相当であると認めることはできないし、更に本件勾留期間も不当に長くなつているとはいえない。

従つて原決定が刑事訴訟法第八九条第四号に該当するものとして保釈請求を却下したのは結局正当であつて本件請求は理由がない。よつて刑事訴訟法第四三二条第四二六条第一項後段によりこれを棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判官 石山豊太郎 松本正一 新月寛)

(別紙略)

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